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犬との関係作り |
| テクニック云々よりも犬を理解すること、コミュニケーションを取ること、信頼に基づいた関係を作り上げることなどに重点を置いたセミナーが多かったことがとても嬉しかったです。私は訓練所を辞めてから、道具やテクニックは一先ず忘れて「犬から見た理想のトレーニング」を自分なりに掴むべく勉強してきたので、そういった意味でこのカンファレンスでは確かな手応えをつかむことができました。最終日のダンバー博士のセミナーはテクニカル面ばかりを議論する今のドッグトレーニングに警鐘を鳴らす内容でしたが、そうした風潮があることを差し引いても会場にはより良いトレーニングを考えようという空気があふれていて、そんな雰囲気の中で5日間みっちり勉強できたことは駆け出しの私にとって何にも代えがたい貴重な体験となりました。私の大好きなトレーナーの一人にSuzanne Clothier (“Bones would Rain from the Sky”の著者)がいますが、彼女の「犬との関係を築く」「犬のボディランゲージを読み取る」という二つのセミナーは私に重要な指針を与えてくれると同時に、今力を入れている分野はトレーナーとしてのベース作りに絶対に欠かしてはいけないステップなのだと自信を持たせてくれました。 |
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ヒューマンコミュニケーションスキル |
| 合計15ほどのセミナーに参加しましたが、印象的だったのはどの講演者も話すことがとても上手だということです。彼らはほとんどがドッグトレーナーですから、何百人もの人を、何時間もの間退屈させずに話す機会などそうそうないと思うのですが、どのセミナーも時間があっという間に過ぎてしまうくらい楽しかったです。中には冗談を連発して参加者を何度も爆笑させる講演者もいましたが、そんな雰囲気の中でも講義のポイントはきちんと整理されていて、流れもスムーズで、授業としてのクォリティがとても高いのです。ドッグトレーニングは犬のトレーニングというよりも飼い主のトレーニングなので、対人間のコミュニケーションスキルが非常に重要だということはよく言われることですが、現実には聞き手を楽しませつつ、重要なポイントは誰にでも分るように正確に伝えるというのはなかなか難しいことです。カンファレンス講演者の高いヒューマンコミュニケーションスキルを目の当たりにして、良いトレーナーになるためにはこのスキルの強化が欠かせないことを改めて感じました。 |
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シェルター/愛護団体の発展 |
| 私の犬との関わりは動物愛護団体のボランティアに始まり、現在もライフワークとして殺処分される動物の削減と里親制度の普及があります。カンファレンスで米社会におけるシェルターの役割、一般市民の反応、感想などにも少し触れることが出来ればと思っていたのですが、何の気なしに入った教室で思いがけず大きな収穫を得ることができました。それはカリフォルニア州マリンカウンティにあるシェルターでディレクターを務めるTrish King (“Parenting Your Dog”の著者)の「外見と行動からミックス犬のブリードを特定する」というセミナーです。詳細については「印象に残ったエピソード」に書いていますが、このセミナーから、私はシェルターの役割は犬や猫の命を救うことのみならず、里子として社会へ送り出す動物に対しての責任をも持つことなのだと学びました。カンファレンス後、ダンバー博士と「シェルターかパピークラス(問題行動の予防)か」ということで議論を交わしましたが、私はパピートレーニングの普及の結果、シェルターの規模や数が減少することはあっても存在自体がなくなることはないと思っています。だとすればシェルターをサンクチュアリ化させないため、そして危険な犬や不幸な一生を送る可能性がある犬を社会に送り出さないための建設的なアプローチも考えていかねばなりません。その答え(の一つ)がこのセミナーで学んだ「ブリードを特定して起こり得る問題行動を予測すること」と「行動観察によるスクリーニングの徹底」だと感じました。参加してよかったと心から感謝したセミナーでした。 |
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NILIF=Nothing In Life Is Free |
| このプログラムを今一度見直そうというKathy Sdaoのセミナーに参加して、今まで当たり前のように使っていながら、実はその理論や有効性などについてあまり深く考えたことがなかったことに気付きました。P+を与えて従わせる従来のトレーニングに比べれば犬に優しいメソッドであることは間違いありませんが、犬にとっての重要な資源(食べ物や飼い主、散歩など)へのアクセスをコントロールするので、人間の優位性を犬に押し付けるという理屈は従来のトレーニングと変わりません。それにも関わらず、犬に優しい矯正プログラムということで広く受け入れられ、多くのトレーナーがしつけの基本として取り入れています。このセミナーは、トレーナーがNILIFの必要性や有効性をきちんと考えているだろうか、トレーニングが極端になりすぎてはいないだろうかといったことを見直そうというものでした。具体的には、NILIFがまるですべての問題行動に効く万能薬のような存在になってきていないだろうか?NILIFに頼るべきケースとそうでないケースがあるのではないか?NILIF以外のアプローチにはどんなものがあるのか?といったことについて考えました。もちろんどれも明確な答えが出る問題ではないのですが、トレーナーに出来ることとして (1)クライアント一人一人に「ここまでなら許容範囲」というラインがあることを認める(そうすればまずNILIFありきのトレーニングをすべてのクライアントに押し付ける必要もなくなるし、NILIFを使うにしても、家族内の特定の人物だけが行ったり、問題行動が消えるまでの期間限定で行うという選択肢が出てくる)(2)解決したい問題ではなく教えたい行動に焦点を当てることで毎日持続的にR+を与える機会を作る(3)十分な運動や遊びを与えて犬の欲求を満たすことで犬をコントロールしやすい状態にする、といったアプローチもあることを学びました。飼い主と犬の関係を見直すことがNILIFの代替案となることが分かり、とても勉強になりました。 |
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問題行動を医学的に見る |
APDTのメーリングリストでは、問題行動の原因について考える時は必ずといっていいほど「飼い主や環境の問題」と「犬の健康問題」という両面から原因を探ろうとします。勉強熱心な人ばかりが集まるリストということもあると思いますが、多くのトレーナーが豊富な医学知識を持っていることに最初はとても驚きました。そんなこともあり、もう少し犬の病気に詳しくなるべく獣医師Louisa Bealのセミナー「問題行動に潜む健康問題」に参加したのですが、そのレベルの高さに再度驚かされました。
セミナーでは、脳、神経、ホルモン系から消化器、泌尿器系まで幅広い病気に触れ、それらに起因する(可能性のある)問題行動の説明を聞きました。病名が英語だったということもありますが、聞いたことのない病名や薬の名前が次から次へと出てくるので正直なところセミナー中はちんぷんかんぷんでした。しかし周りを見回すと、ほとんどの参加者はウンウンと頷きながら聞いていて、聞いたことのない病気などないといった様子です。私は余りにも知らなさ過ぎるのだな、と反省しました。異食症、汚食症から注意欠陥、攻撃性、自傷まで問題行動には身体の異常が原因となっている場合がたくさんあり、その組み合わせやパターンは犬種や個体差にも影響されるので無限といえると思います。そのために獣医さんがいるわけですが、トレーナーとしても、問題行動の矯正を行う際には環境と健康問題の両面から原因究明に当たること、そしてそのためにはあらゆる病気とその症状、薬の作用などについての知識をストックしておく必要があることを学びました。 |
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taproot behavior |
元警察犬トレーナーで現在は警察犬アカデミーのインストラクターを務めるSteve Whiteのセミナーがあったので、R+を使う警察犬のトレーニングとはどんなものなのだろうという好奇心から参加してみました。プロフィールを読んでクリッカーエキスポの常連講師でもあることを知り、さらに興味を持ちました。
”Dirty Dogs Done Dirt Cheap”という彼のセミナーは、トレーニングを犬にとってもハンドラーにとっても楽なものにするためにはどうすれば良いかというものでした。私のような駆け出しでもすぐに実践できるアドバイスが満載で、Trish Kingのセミナーと並んで最も参加して良かったと感じたセミナーです。犬をよく知る、自分をよく知るという基本から飼い主に教えるべきスキルまで、トレーニングの効果を上げるためのテクニックを本当にたくさん学んだのですが、中でもtaproot(=core) behaviorを強化するというコンセプトがとても為になりました。Taprootとは植物の根っこという意味で、犬のスキルの土台となる行動です(Steveの場合は”Watch me”)。どんなトレーニングをする時でもこのtaprootは毎回必ず練習することが大事だそうです。中途半端にしか出来ない行動をたくさん教えるのではなく、これだけはどんな状況下においても必ず出来るという行動を一つ作っておき、その行動を強化することにたっぷり時間をかけます。そうすることで難しいトレーニングへの移行がスムーズになり、ハンドラーより魅力的な存在(他の犬や動物、臭いなど)に負けることなくトレーニングが出来るということでした。納得です! |
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印象に残ったエピソード |
日本のシェルターで、里子候補のスクリーニング用プロトコルを持っているところは稀だと思いますが、米国では多くのシェルターが取り入れています。その理由は主に二つあります。一つはシェルターに来る動物が多くすべてを保護しきれないため、里子に適した犬、適さない犬を選別し後者を安楽死させる必要があること、もう一つは事故があった際に訴訟を起こされないよう犬の気質やこれから発生しうる問題などを出来るだけ詳しく里親候補に説明する必要があるためです。ブリードが特定できればそれぞれの犬種特有の行動からその犬に合った家庭を探すことが可能になります。また他の犬との遊び方、食べ物やおもちゃといったものに対する反応を注意深く観察し、事故を起こす可能性が極めて低いことを確認できれば安心して里子へ出すことが出来るのです。ここまでは特別珍しい話ではないのですが、印象的だったのはある母犬と5匹ほど(生後3週間程度)の子犬たちのケース(ビデオ)です。
この母犬は野良犬で、妊娠している間も人間を警戒しながら食料を探し回ったりしてとてもストレスフルな環境で子犬を産みました。その為、シェルターに保護されてからもあらゆるものに怯え、ビデオカメラを向けるスタッフにも歯を剥く始末でした。そして子犬も、そんな環境で生まれ育ったためスタッフが抱き上げると激しく抵抗しキューキューといつまでも泣いているのです。生後3週間の子犬です。日本なら子犬を欲しがる人が我先にと引き取っていくでしょう。ところがこのシェルターでは母犬ともにすべての子犬を安楽死させました。
生後3週間程度なら、これからの扱い方次第でどうにでもなると思ってしまいませんか?ボランティアをしながら「子犬はいないの?」という言葉を飽きる程聞いてきた私はこの安楽死の意味をしばらく考えることになりました。しかし、母犬のストレスホルモンの影響を受けたこの子犬たちには様々な精神障害の兆候が見えており、そんな爆弾を抱えたまま里子に出すなど無責任なことは出来ないというTrishの説明は十分納得の行くものでした。仮にこの子犬たちが無事に引き取られ徹底的な社会化をされたとしても、先天的な精神障害はいつ表面化するか分かりません。表面化した時に咬傷事故を起こしたり、飼い主が扱いきれなくなったら再びシェルター行きとなってしまいます。シェルターに返されるならまだしも、飼い主から体罰を受けたり庭に一生つながれっぱなしという「生き地獄」を味わう可能性すらあります。この子犬たちが幸せな一生を送れるという確信を持てないし、安全な犬として自信を持って社会へ送り出すことができない、それならばということで安楽死の判断をしたのでした。
この母子が仮に今全米で大きな問題となっているピットブルやそのミックスだったとしたら、里子に出すにあたってさらに大きな壁が存在します。ピットでも、いわゆるファイティングストックの血統ではない犬は温和な気質を持った個体も多いそうですが、元は闘牛や闘犬用に作り出された犬ですから遺伝子レベルで見ればケンカで相手を殺したとしても何の不思議もありません。生まれつき恐がりのこの子犬たちが何らかの刺激に対する恐怖から人間や他の犬を攻撃したのだとしても、ピット系だというだけで事故はメディアに大きく取り上げられ、ただでさえ芳しくないこの犬種のイメージをさらに傷つけることになってしまうのです。不条理な話ですが、今のピット系の犬たちのように危険犬種のレッテルを貼られ、不当な扱いを受ける犬を減らすためには、安楽死が最適なケースがあります。なんとも後味の悪い話でしたが、シェルターのあり方についてつくづく考えさせられたエピソードでした。
*ちなみに、米国のシェルターでは9秒に1頭 (“One at a Time- A week in an American Animal Shelter”より)が安楽死させられていると言われ、この状況に対して「安易すぎる」という批判はとても多いです。 |
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日本と米国のトレーニング事情で感じた違い |
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日本のドッグトレーニングはまだまだ発展途上といっていいと思いますが、ダンバー博士曰く、日本人は「他国の真似をしてコピー品を作り、改良を繰り返してオリジナルよりも良いものを作り出すのが得意な民族」だそうで、いずれは日本がペットドッグトレーニングを引っ張っていく存在になるとおっしゃっていました。この国民性の分析が正当かどうかは置いておいて、今の日本はまさに欧米のペットドッグトレーニングを一生懸命取り込んでいる段階にあると思います。しかし、ここで忘れないようにしたいのは、知識やテクニックやグッズだけを輸入するのではなく、犬との生活をより豊かなものにするための「文化」をも一緒に輸入することだと思うのです。米国の多くのトレーナーは、ドッグトレーニングで生計を立てていても、一般市民の犬への理解を深めてもらうために様々な活動に参加したり無償のサービスを提供しています。例えばセラピードッグのトレーニングを受けた犬と一緒に幼稚園や小学校を訪問して子供達に犬との接し方を教えたり、子犬の社会化の機会として、貸切バスで市内の商店街やレストランを訪問したり、犬と楽しく暮らすためのコツを書いたチラシを作ってシェルターやコミュニティーセンター(公民館)で配布したり。ダンバー家の2頭もそうですが、シェルターから積極的に犬を預かってトレーニングをしたり(フォスター)、難しい犬を引き取って育てているトレーナーも少なくありません。シェルターでの犬のトレーニングに少しでも時間と労力を提供するトレーナーが増えれば、シェルターの稼働率も上がり、保護犬に対する偏見も減ってゆくはずなのですが、あいにくこうしたアプローチを取ろうとする日本のトレーナーにはほとんどお目にかかったことがありません。自分の持てる知識や経験を社会に還元するという精神が当たり前のように存在する米国と、ボランティアというコンセプトが比較的新しい日本との差はありますが、このような地味な活動こそが今の日本のペットブームをブームで終わらせず世界に誇れる犬文化へと育ててゆくと思うので、もっとたくさんのトレーナーがこうした活動に積極的に取り組んでくれると良いなと思います。 |
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これから具体的に取り組んでいきたいこと |
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たくさんありすぎて絞り込めていないのですが、トレーナーとして特に力を入れていきたいことは未だに謎の多い分離不安やsound sensitivityのケーススタディです。それ以外では、一般の人々の保護犬に対する理解を深めてもらうための活動と、アマチュアブリーディングの危険性を出来るだけ多くの人に知ってもらうための啓蒙活動を行っていきたいと考えています。これらに加え、今回の滞在で将来ぜひやってみたいことが出来ました。それは、保健所や公民館、学校などで犬との生活に関する様々なテーマのお話し会を開くことです。カンファレンス後、しばらくダンバー家にお世話になったのですが、ある夜ダンバー博士が市内のデイケアセンターで一般の飼い主やシェルタースタッフを対象にした無償(!)のレクチャーを行うというので参加しました。テーマはおもちゃの使い道(おもちゃを上手く使って問題行動を予防する)で、決して高度な内容ではなかったのですが、参加者の抱える問題にアドバイスしながら話を進めたり、トレーニングの効果を実感するためのちょっとしたコツを紹介したりしていてとても参考になりました。米国でも問題行動の予防に関するセミナーは参加者が少なく、逆に問題行動の直し方がテーマになるとそれはたくさんの人が参加するそうで、日本同様まだまだ予防には関心が低いようです。しかし例え10人でもダンバー博士のメッセージが届いたなら、それだけ問題行動を未然に防ぐという認識を持った飼い主が米国に増えたことになります。地道な活動ですがやらないよりはマシ、という姿勢にとても共感しました。私ももう少し経験を積んだらこのような、誰でも気軽に参加できる無償のお話し会をやってみたいと思っています。 |
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これから奨学生に応募する方へ |
私は訓練所を辞めた後、本物の陽性強化トレーニングに触れたくて欧米で出版されている本を片っ端から読みました。似たようなことが書いてある本も多く、知識だけは十二分に得た気持ちでいましたが、カンファレンスに参加していわゆる教科書の陽性強化トレーニングと現実との間には大きなギャップが存在すること、またR+トレーナーの間でもてはやされているアイディアやコンセプトに対しての疑問もたくさん存在することを知りました。その一つが先に書いた「NILIF」についてです。
こうしたギャップや疑問はたくさんの生の声を聞かなければ知りえないことです。本に書いてあることを鵜呑みにしたままトレーニングをするのではなく、最新のトレーニング情報とそれを実践している人の声を聞き、自らの体験とすり合わせてその是非を考えることこそが良いトレーナーを育てるのだとカンファレンスに参加して確信しました。その意味で、同じ目的を持った何百人もの仲間と話が出来るこのカンファレンスは本当に貴重な勉強の場なのです。
昔ながらのトレーニングがはびこっている日本では特に、若い世代が積極的に新しいものを取り入れる努力が求められると思います。英語が話せないから、と躊躇されている方が多いのではないかと思いますが、講義の中には専門用語がたくさん出てくるものもあり、それらは獣医学や行動学、トレーニングにある程度携わってきた方なら特別英語が出来なくても理解できる内容だと思います。現在ダンバー博士の元で研修している辻村愛さんとお話する機会がありましたが、彼女は英語が得意ではないそうですが大学、大学院と動物の研究をされてきたので専門用語がたくさん出てくる講義の方が理解しやすいとおっしゃっていました。私はその逆で、英語の問題はないのですが、専門用語がたくさん出てくる講義は難しすぎて理解しきれない可能性もあったため基礎的な内容のセミナーを選んで参加してきました。すべての時間帯で最低3つのセミナーがあるのでこのように自分のレベルに合わせて参加することが可能ですし、内容がすべて理解できなくても1ヶ月後に全講義が入ったCD-ROMが販売されるのでそれを使って復習も出来ます。APDTのカンファレンスは最先端のドッグトレーニングに触れ、日本のドッグトレーニングを客観的に見る機会を与えてくれる貴重な場です。英語に自信がない方もぜひ、ぜひチャレンジすることをお勧めします。
英語をまず勉強したいという方にはAPDTのメーリングリストもお勧めです。多いときは一日に50通以上のメールが届きますが、英語を勉強しながらトレーニングに関するあらゆる話題に触れることができるので私はとても重宝しています。 |
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日本のトレーナーに伝えたいこと |
学校や訓練所で教えているトレーニングよりももっと効率的で犬に優しい方法があるかも知れないということを常に頭の片隅に置いてアンテナを張り巡らしていてほしいと思います。私はイギリスでの研修に参加するまでリードはトレーニングの道具ではないということを知りませんでした。ダンバー博士や私の尊敬するトレーナーSuzanne Clothierもよく言いますが、リードは犬の安全を確保するためのものであり、リードを使ってトレーニングしなくてはいけないような犬とはそもそもトレーニングの基盤となる信頼関係が出来ていないのです。こんな基本的なことも知らずにテクニックだけ詰め込んだところで良いトレーナーになれるはずもないのだいうことを今回のカンファレンスで改めて痛感しました。
ありがたいことに私はこの5日間で目からウロコな体験をたくさんさせて頂きました。この経験が、私のトレーナーとしてのキャリアの揺るぎない礎となったことは間違いありません。しかし、こうした経験と同じくらい重要なのが、既存のアイディアやコンセプトを受身の姿勢で学ぶのではなく、これで良いのか?もっと良くできないのか?と常に疑問を持って積極的に学ぶ姿勢だと思うのです。犬を力ずくで従わせることが当たり前だった20年前と違い、私たち若い世代はドッグトレーニングに関するあらゆる情報から良いものを選択することが可能です。視野を広げ、新しいものを積極的に取り入れ、残す必要のないものはいさぎよく切り捨てる柔軟性を持ってすれば本当に良いものがおのずとメインストリームに来ると思います。これからの時代、教科書通りの知識とテクニックしか持たないトレーナーではなく、自ら選択して学び、犬から真の尊敬と信頼、そして自発的な協力を得られるトレーナーがたくさん育つと良いな、と心から思います。 |
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日本の犬の飼い主に伝えたいこと |
(1) 犬は犬です。彼らの行動様式を尊重しましょう
(2) 犬からのコミュニケーションを正確に読み取れるようになりましょう
(3) 犬種の違いを知りましょう
(4) トレーナーや教室は、問題行動が発生してからではなく飼ったらまず利用しましょう
(1)、(2)、(3)は同じようなことなのですが、犬という動物と生活を共にするのなら彼らをもっとよく知りましょう、ということです。カンファレンスでanthropomorphism(=擬人観)を考えるセミナーがありました。私は残念ながら参加出来なかったのですが、これは犬を飼う者なら誰しもがしっかりと意識しなくてはいけない重要な問題だと思います。犬に人間の精神を当てはめることは様々な弊害があります(e.g. 留守番中にトイレの粗相をしてしまう犬を「置いていかれた腹いせにやった」と勘違いして叱る)が、anthropomorphismを犬とコミュニケーションを取るツールとしてうまく利用すれば、犬に過剰なストレスを与えることなく共同生活を楽しむことができます。犬の行動様式を学ぶというステップをおろそかにするばかりに犬の犬らしい行動を「何かがおかしい」と悩んだり、叱ってはいけない行動を叱って問題行動を悪化させている飼い主さんに毎日たくさん出会います。犬の行動や心理に関する本を1冊読むだけでもきっとたくさんの疑問、悩みが解決されるのに…と残念です。日本の犬文化が欧米と比較して大きく遅れている理由は、ひとえに犬をぬいぐるみやおもちゃのように買う人がとても多く、犬との楽しい共同生活には信頼に基づいた関係作りとトレーニングが不可欠だという認識がまだまだ浸透していないことです。無知は人間悪の温床とは言い過ぎかも知れませんが、知らないということが犬にどれほどのストレスとダメージを与えているかをもっともっとたくさんの飼い主さんに自覚して頂きたいと切に願います。すでに犬を飼っていて犬との関係作りやトレーニングの重要性に気付いた飼い主さんから、まだ知らない人へとメッセージを発信していくことが日本の犬の幸せレベルを上げる一番手っ取り早い方法だと思うので、私も一飼い主として身近なところから取り組んでいこうと思います。 |
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最後に |
講演者の、ずっしりと心に響いた一言、「そうだ!」とひらめいた(?)一言などをいくつか紹介したいと思います。どれも至極当たり前のことです。でも忘れがちなことでもあります。ご参考まで…。
“Build a relationship on what the dog gives you naturally- a dog is a “relationship waiting to happen.” -Roger Abrantes and Ian Dunbar
“It’s natural for a dog to growl. They’re not going to meow!” -Ian Dunbar
“Using a training tool on the dog is RESTRAINING, not training” -Suzanne Clothier
“A trainer’s job is to train both ends of the leash.” -Steve White
“New things are attractive when allowed to approach voluntarily. New things are scary when introduced suddenly.” -Temple Grandin
“Humans make mistakes all the time- why should we expect our dogs to be 100% reliable?” -Steve White
“We (shelters) must take responsibility for the dogs that we adopt out- or it will come back to haunt us.” -Trish King
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